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自動車メーカーの再編・統合を巡る議論は、毎年のように繰り返されてきた。Hondaと日産自動車、長安汽車と東風汽車による統合協議が最終的に実を結ばなかった一方、意外にも今年の協業事例として注目を集めているのが、中国の大手自動車グループである中国第一汽車集団(FAW)と広汽集団(GAC)の提携だ。
一汽と広汽はこのほど、協業に向けた基本的な意向を確認した。広汽は一汽が保有するある完成車合弁会社の一部株式を取得する方向で、対象は一汽トヨタとみられている。
実現すれば、中国の「南北トヨタ」と呼ばれる一汽トヨタと広汽トヨタは、実質的に「一つのトヨタ中国」に近づくことになる。また、取引完了後には一汽が広汽の第2位株主となり、戦略的な影響力を持つ株主となる可能性がある。
投資額や具体的な協業方式については、今後策定される協業枠組みの中で決定される見通しだ。投資額を左右する最大のポイントは、一汽トヨタの企業価値となる。
試算によれば、一汽が広汽において重要株主としての地位を確保するには、少なくとも15%程度の株式を取得する必要がある。一方、広汽が一汽トヨタに出資する場合、その持ち分は10~25%程度になる可能性がある。
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1. 一汽トヨタの株主構成が変わり、「トヨタ中国」が浮上
現在の一汽トヨタの株主構成は、一汽が50%、トヨタ自動車が45.7706%、トヨタ中国が4.2294%となっている。また、一汽トヨタ販売会社については、一汽が38%、トヨタが32%、一汽トヨタが30%を保有している。
仮に広汽と一汽が一汽トヨタの株式をそれぞれ25%ずつ保有する形になれば、一汽トヨタの経営は実質的に広汽とトヨタの影響力が大きくなる可能性がある。「一汽トヨタ」というブランド・企業体は、形式上は残りながらも、その位置付けは大きく変わることになる。
広汽が一汽トヨタに出資すれば、一汽、広汽、トヨタの3社が連携し、一汽トヨタの経営資源をさらに統合する動きにつながる可能性がある。ただし、具体的な統合方法を左右するのは今後の人事でもある。
その象徴ともいえるのが、これまで広汽トヨタの総経理(社長)を務めていた藤原寛行氏が一汽トヨタの総経理に転じた人事だ。中国自動車業界でも異例の人事として受け止められた。
複数の中国メディアによると、トヨタは現在、新たな「トヨタ中国販売会社」の設立を進めているとされる。構想では、トヨタが50%、一汽と広汽がそれぞれ25%を出資する案が浮上している。
また、現在、広汽トヨタの中国側トップと一汽トヨタ販売会社のトップはいずれも空席となっている。こうした人事上の変化も、「南北トヨタ」のさらなる統合に向けた布石との見方につながっている。
そもそも、一汽と広汽という南北の大手自動車グループが協業すること自体、市場にとって予想外だった。表面的に見ると、両社は産業面で最も相性の良い組み合わせとは言いにくい。
競争と協業の双方を見ても、両社の接点は主としてトヨタとの合弁事業にある。
かつて一汽は、広汽とトヨタが設立した広汽トヨタの事業に参画することができなかった。しかし現在、その関係は広汽が一汽トヨタに出資するという形で、大きな転換点を迎えようとしている。
ガソリン車市場と合弁車市場が縮小するなか、カローラとレビン、ハイランダーとクラウン・クルーガーなど、「南北トヨタ」が展開してきた双子車戦略を巡る社内競争は激しくなっている。
トヨタも南北トヨタの経営資源や市場を統合する方向に動いており、姉妹車のラインアップを徐々に整理したり、一部販売店で両ブランドの車種を扱ったりするなど、効率化を進めている。
一汽が広汽の戦略的株主となれば、南北トヨタの協業にはさらに大きな可能性が生まれる。それは将来的に、フォルクスワーゲンやHonda、東風汽車、上海汽車など、他の大手自動車グループによる協業を促す先行事例となる可能性もある。
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2. 広汽の新エネルギー車技術が、一汽の重要な補完戦力に
広汽トヨタの設立から22年。広汽とトヨタはこれまで、中国の合弁自動車メーカーにおいて数多くの先駆的な取り組みを実現してきた。
特に電動化・知能化への転換では、両社の協業は比較的スムーズに進み、一定の成果を上げている。
縮小が続くガソリン車市場において、広汽トヨタは現地市場に合わせた商品開発や事業運営の高度化、コスト競争力の強化によって、カムリやシエナなどの上位モデルの市場を維持してきた。これが、中国市場におけるトヨタの販売順位を着実に押し上げる要因の一つとなっている。
同時に、BEV「鉑智3X(bZ3X)」の販売が好調に推移し、「鉑智7(bZ7)」も新たな顧客層への浸透を進めている。トヨタと広汽が共同で展開する「鉑智」ブランドは、合弁メーカーによる電動化転換の一つの事例となっている。
広汽トヨタが中国で構築してきたサプライチェーンや電動化・知能化関連のリソースは、一汽トヨタが抱える新エネルギー車事業の課題を改善し、南北トヨタの市場競争力を組み合わせるうえでも活用できる可能性がある。
産業構造の観点からみると、一汽と広汽の今回の協業は、商用車、乗用車、自主ブランド、合弁事業など複数の分野で経営資源を補完する関係につながる可能性がある。
将来的には、生産・販売規模で中国最大級の自動車グループを形成する可能性も否定できない。
両社と合弁事業を展開するトヨタにとっても、今回の動きは歓迎すべきものだろう。トヨタが進めてきた「南北トヨタ」の協調を大きく前進させる可能性があるためだ。
研究開発、生産、販売の各領域で経営資源を統合し、「一つのトヨタ」に近づけることで、中国市場の変化により高い効率で対応し、合弁メーカーとしての競争力を高める狙いがある。
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3. 資本提携から技術共有へ、一汽と広汽の協業にはさらなる可能性
仮に一汽と広汽による新たな協業モデルが実現すれば、中国の他の完成車メーカー間の協業も加速する可能性がある。特に東風汽車、上海汽車、長安汽車、北汽集団などへの波及が注目される。
中国政府が最近公表した「スマートコネクテッド・新エネルギー車産業発展第15次5カ年計画」では、初めて「生産能力の警戒・調整」がトップレベルの政策設計に盛り込まれ、過剰で非効率な生産能力を秩序立てて退出させる方針が示された。
国家発展改革委員会産業発展司の邵稷副司長は、主要企業が研究開発や生産などの経営資源を効果的に統合し、同質化した競争を避けることを支援すると説明している。
これまでのような直接的な合併・買収とは異なり、一汽と広汽は今後、自主ブランド事業における研究開発、調達、販売、海外市場などの分野で協力する可能性がある。
特に駆動用電池、モーター、電動制御システムといった「三電」技術や、車載ソフトウエアを含む知能化技術での連携が進めば、Hondaと日産の統合協議が破談となった後に両社が協業を模索した動きとも重なる。
一汽はこれまで、EVメーカーの零跑汽車(Leapmotor)に出資し、技術・事業面での協業を進めてきた。零跑向けにエンジンを供給するなど、自動車メーカー同士が資本、技術、サプライチェーンを組み合わせることで協業効果を生み出す先例はすでに存在する。
近年、一汽の乗用車事業は自主高級ブランド「紅旗(Hongqi)」に経営資源を集中し、BYDの「ブレードバッテリー」も導入した。しかし、事業規模はまだ小さく、市場への影響力には限界がある。
一方、広汽も「埃安(AION)」と「伝祺(Trumpchi)」に加え、上位市場への進出を目指してきたものの、簡単ではない。「昊鉑(HYPTEC)」ブランドは事業の立て直しを迫られており、華為技術と協業する「啓境(AISTALAND)」も始動したばかりだ。
広汽はすでに、自主ブランドで培った電動化・知能化技術やサプライチェーンの能力を広汽トヨタに導入している。今後、それらを一汽乗用車や紅旗などの自主ブランドにも展開できれば、新エネルギー車技術における両社の協業余地は大きい。
広汽トヨタの「鉑智」ブランドのリソースを一汽トヨタに活用するだけでなく、広汽が電動化・知能化分野で蓄積してきた技術や、昊鉑、啓境という上位ブランドでの試行錯誤も、紅旗などの高級ブランドに新たな成長余地をもたらす可能性がある。
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4. 一汽、広汽、トヨタ、それぞれが新たな答えを探す
これまでの自動車業界の再編では、どの企業が先に市場から退出するのかという議論が注目されてきた。非効率な生産能力を段階的に整理し、どの自動車メーカーが歴史の舞台から姿を消すのかが焦点となっていた。
しかし今回の協業では、業界全体の成長の質を高めることに重点が置かれている。統合も容易な領域から難しい領域へと段階的に進め、華々しいスタートを競うのではなく、統合後にどのような実効性を生み出せるかがより重視されている。
一汽にとっては、資本提携を通じて一汽トヨタという合弁事業の経営資源をさらに活性化し、世界最大の自動車メーカーであるトヨタが中国市場での事業展開を強化し、より多くのグローバルリソースを中国に投入することにつながる可能性がある。
一方、広汽が蓄積してきた電動化・知能化に関する技術やサプライチェーンも、一汽の産業基盤を通じて、より広い領域で活用される可能性がある。
今後、「鉑智」ブランドをモデルケースとして、広汽トヨタが構築してきた電動化プラットフォームや技術が一汽トヨタの新エネルギー車事業を押し上げる展開も考えられる。また、広汽トヨタが海外市場への展開を本格化させる可能性もある。
鉑智3Xが香港市場に投入されたのに続き、次世代ハイランダーはグローバル市場を視野に入れたモデルになるとされる。
新たな協業の第1号案件として、一汽と広汽の提携が成功するかどうかは、中国自動車産業にとって大きな意味を持つ。両社の協業モデルは業界からさらなる支持を集め、中国自動車産業が経営資源を結集し、競争力を高めていくうえで、新たな選択肢を示すことになる。
一汽にとって広汽は、重要な産業シナジーを生み出すパートナーとなる。広汽にとって一汽は、事業規模を拡大し、合弁事業の経営資源を最適化する重要な機会を提供する。
そしてトヨタの視点に立てば、「南北トヨタ」の統合こそが、今回の協業の背後にある最も重要な戦略変数となる可能性がある。
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